こんなことはありませんか?
お盆やお正月の帰省が近づくと、カレンダーを見るだけで少し気が重くなる。久しぶりに親戚が集まる席で「結婚はまだ?」「仕事はうまくいってるの?」と聞かれ、笑ってやり過ごしても、帰りの電車ではぐったりしている。家族のことが嫌いなわけではないのに、どうしてこんなに疲れるんだろうと、罪悪感まで湧いてくることもあります。
何が起きているのでしょう
家族の集まりが特に疲れるのには理由があります。家族の中では、子どもの頃から決まっていた役割に戻りやすいのです。実家に帰った瞬間に「しっかり者の長女」「心配される末っ子」「場を和ませる人」に戻り、今の自分とは違う姿を演じるのに多くのエネルギーを使います。家族療法ではこれを家族システムの中のパターンとして説明し、誰か一人が変わろうとするとシステム全体が元に戻ろうとする力が働くと考えます。
もうひとつは期待と現実のギャップです。お正月やお盆には「家族みんなで和やかに過ごす」という絵が当たり前のようについてきます。でも実際の家族には、昔からのわだかまりや世代の違い、お金や介護の問題があるものです。理想と現実の差が大きいほど、がっかりした気持ちや疲れも大きくなりがちです。しかも「楽しく過ごすべき日」には、しんどさを口に出しにくく、飲み込んだ気持ちがたまりやすくなります。
心理学でいう**自己分化(differentiation of self)**という考え方も参考になります。家族と近くにいながらも、自分の考えや感情を区別して保てる力のことです。自己分化が進むほど、家族の言葉に振り回されず、かといって冷たく突き放すのでもない、ちょうどいい距離を見つけやすくなるといわれています。疲れてしまうのはあなたがおかしいからではなく、古いパターンの中で自分を守ろうとがんばっているサインかもしれません。
今日からできること
1. 滞在時間を先に決めておく
「お昼を食べたら3時ごろに失礼するね」のように、着く前に滞在時間を決めて軽く伝えておきましょう。終わりが見えていると、乗り切る力が変わります。帰りの電車の時間を決めておくと、席を立つのもぐっと楽になります。
2. 困る質問には短い答えを用意する
結婚、就職、収入、子どもなど、毎回聞かれる質問には一言の答えを決めておきましょう。「そのことは自分で考えてるから大丈夫。それより、お母さんの畑はどう?」と短く答えて話題を変えれば、巻き込まれにくくなります。すべての質問にていねいに説明する義務はありません。
3. 途中で一息つける時間をつくる
洗い物を手伝うと言って台所に行ったり、おいっ子と散歩に出たり、ちょっとコンビニに行ったりするのもいい方法です。5〜10分その場を離れて深呼吸するだけで、たまっていた緊張が少しほどけます。これは逃げではなく、また戻るための充電です。
4. 自分なりのやり方で気持ちを伝える
すべての行事に参加しなければ愛情が伝わらない、というわけではありません。今回は短めの滞在にして手紙を書いたり、別の日に親と二人きりで食事をしたりすることもできます。自分に合ったペースで伝えた気持ちのほうが、長く続きます。
5. 帰ってきた後の回復時間を確保する
集まりの翌朝は予定を入れず、ひとりの時間を持ちましょう。何がしんどかったか、それでも悪くなかった瞬間は何だったかを短く書き出すと、気持ちが整理されます。次の集まりの準備をするときのヒントにもなります。
こんなときは助けを求めてください
家族の集まりを思い浮かべるだけで眠れなくなったり、集まりの後に何日も落ち込んで何もする気が起きなかったりするなら、ひとりで耐えなくて大丈夫です。暴言や暴力、強い支配がある関係なら、なおさら距離を置いて自分の安全を優先してください。心療内科や精神科、カウンセラー、地域の精神保健の相談窓口を頼ってみましょう。危険を感じるときや気持ちが限界のときは、すぐに地域の緊急番号や相談ダイヤルに連絡してください。
家族のことは、誰にも話しにくいことが多いものです。こころが、評価したりせずに、あなたの話を最後まで聴きますね。