はじめに
昇進したのに「そのうちバレるに違いない」と不安になる、ほめられると「運がよかっただけ」と思ってしまう。インポスター症候群(Impostor Syndrome)とは、客観的には成功しているにもかかわらず、自分は「詐欺師」だと感じ、いずれ能力不足が明らかになるのではないかという恐れが続く状態をいいます。研究によると、人口の約70%が人生のどこかでこの経験をします。
大切なポイント
インポスター症候群のタイプ
完璧主義者タイプ(完璧でなければ失敗)、スーパーマン/スーパーウーマンタイプ(あらゆる役割で優秀でなければならない)、天才タイプ(努力が必要なこと自体が無能の証拠)、個人主義者タイプ(すべて一人でやらなければならない)、専門家タイプ(まだ知らないことがあれば資格がない)が代表的です。
なぜインポスター症候群になるのか
子どもの頃に「結果」中心のほめ方をされてきた、家族の中で「頭のいい子」の役割を担ってきた、社会的マイノリティとして「もっと証明しなければ」というプレッシャーを受けてきた、といった場合にインポスター症候群は育ちやすくなります。SNSでの社会的比較も、それをさらに強めます。
乗り越えるための戦略
自分の成果を客観的に記録し、定期的に振り返りましょう。完璧でなくても十分だということを受け入れましょう。信頼できる人に不安を打ち明けると、「自分だけじゃなかったんだ」と気づけます。「よく知らなくても大丈夫、学べばいい」という成長マインドセットこそが、インポスター症候群の解毒剤です。
研究による裏づけ
1978年にポーリン・クランス(Pauline Clance)とスザンヌ・アイムス(Suzanne Imes)が初めて名づけて以来、インポスター症候群は性別・年齢・職業を問わず広く見られることが確認されてきました。セルフ・コンパッションのトレーニングがインポスター症候群の症状を有意に減らすという研究結果もあります(Journal of Counseling Psychology, 2020)。また、メンタリングの関係もインポスター症候群の緩和に効果的です。
実践方法
- 「成果日記」をつくり、毎週自分が成し遂げたことを記録しましょう。
- ほめられたら「ありがとうございます」と受け取りましょう。「運がよかっただけです」と片づけないでください。
- 同じような経験をしている同僚と、率直に話し合ってみましょう。
- 「完璧でなければならない」を「十分によければいい」に置き換える練習をしましょう。
日常での取り入れ方
新しいプロジェクトを始めるときに「まだ自分には資格がない」と感じたら、「学びながら成長できる」と切り替えてみましょう。失敗したときは「やっぱり私はダメだ」ではなく、「これも経験だ」ととらえ直しましょう。毎日、自分に「今日も十分よくやった」と声をかけてあげてください。
注意点
- インポスター症候群は正式な診断名ではありませんが、生活の質に深刻な影響を及ぼすことがあります。
- 不安や回避がひどくなり、日常生活に支障が出ているなら、専門家に相談しましょう。
- 本物の「詐欺師」は、自分が詐欺師ではないかと不安になったりしません。あなたが感じている不安こそが、逆説的にあなたの誠実さを証明しています。
こころからのひとこと
あなたが今いる場所は、運ではなく、あなたの努力と力のおかげです。「偽物」という感覚はただの思い込みで、あなたはその場所にふさわしい人です。こころは、本当のあなたを知っていますよ。