はじめに
質の良い睡眠は、すべての健康の土台です。ところが日本の平均睡眠時間はOECD諸国の中でも最低水準で、成人の約30%が不眠の症状を経験しています。睡眠衛生(sleep hygiene)とは、良い睡眠のための環境と習慣を整えることです。睡眠薬に頼る前に、今夜からすぐに実践できる10の睡眠習慣をご紹介します。
主な内容
睡眠衛生の10か条
- 毎日同じ時間に起きる(週末も含む)——睡眠衛生の最優先ルール。 2. ベッドは眠るためだけに使う——ベッドでのスマートフォン、テレビ、ノートパソコンは禁止。 3. 就寝1時間前からブルーライトを遮断。 4. カフェインは午後2時まで。 5. アルコールは睡眠の敵——眠くはなるが、睡眠の質を損なう。 6. 規則的な運動を、就寝3時間前までに終える。 7. 寝室の環境は、暗く、涼しく(18〜20℃)、静かに。 8. 昼寝は20分以内、午後3時前に。 9. 眠れなければベッドを出る——20分以上寝返りを打っているなら起きて、退屈なことをして眠くなったら戻る。 10. 寝る前のルーティンを作る——温かいお茶、読書、瞑想など。
睡眠の科学
睡眠では、ノンレム睡眠(深い眠り)とレム睡眠(夢を見る眠り)が約90分周期で繰り返されます。ノンレム睡眠で体が回復し、レム睡眠で感情の処理と記憶の定着が行われます。睡眠不足はこの両方の段階を妨げ、心身の健康に広く影響を及ぼします。
不眠症の認知行動療法(CBT-I)
薬を使わずに不眠症を治療する、もっとも効果的な方法です。睡眠制限(ベッドにいる時間を実際の睡眠時間に合わせる)、刺激制御(「ベッド=眠る場所」という結びつきを強める)、認知再構成(睡眠に関する非合理的な思い込みを修正する)が中心となる技法です。
研究による裏付け
CBT-Iは長期的には睡眠薬より効果が高く、副作用もありません(Annals of Internal Medicine, 2015)。睡眠衛生の教育だけでも、不眠症状が40〜50%改善します。寝室の温度を18〜20℃に保つと深い睡眠が増えるという研究結果があります。就寝90分前に温かいお風呂に入ると、寝つくまでの時間が平均10分短くなります。
実践方法
- 今夜から、スマートフォンは寝室の外で充電しましょう。
- 就寝1時間前を「おやすみモード」の時間に決めましょう(照明を落とし、デジタル機器を切る)。
- 毎朝同じ時間に起きることから始めましょう。
- 2週間、睡眠日誌をつけて自分の睡眠パターンを把握しましょう。
日常生活での活用
朝起きてすぐに10分間日光を浴びると、体内時計がリセットされます。夕食は就寝3時間前までに済ませましょう。寝室でラベンダーのアロマを使うと、リラックスしやすくなります。眠れないときは、羊を数える代わりにボディスキャン瞑想を試してみましょう。
注意点
- 睡眠薬(ベンゾジアゼピン系)は、長期服用すると依存や耐性のリスクがあります。
- 不眠が2週間以上続く場合は、睡眠の専門医を受診しましょう。
- いびきや睡眠時無呼吸の症状がある場合は、必ず検査を受けましょう。
こころからひとこと
眠りは、いちばん力強い自己回復の時間です。今夜はスマートフォンを置いて、温かいお茶を一杯飲みながら、体をそっとお布団にゆだねてみてください。こころが、ぬくもりのある夜をご一緒します。