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複雑性心的外傷後ストレス:繰り返された傷が残したもの

単回性のトラウマとは異なる複雑性PTSDの特徴、症状、治療のアプローチを解説します。

読了時間 11分閲覧 262024年2月22日
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はじめに

一度きりの衝撃的な出来事(事故、自然災害など)によるPTSDとは異なり、複雑性心的外傷後ストレス(複雑性PTSD)は、繰り返し長く続くトラウマ——家庭内暴力、児童虐待、情緒的ネグレクト、長期にわたるいじめ——から生じます。ジュディス・ハーマン(Judith Herman)が最初に概念化した複雑性PTSDは、2018年に世界保健機関(WHO)のICD-11に正式な診断名として収載されました。

大切なポイント

複雑性PTSDに特徴的な症状

一般的なPTSDの症状(フラッシュバック、過覚醒、回避)に加えて、3つの中核症状が現れます。感情調整の困難(爆発的な怒り、慢性的な空虚感、感情の麻痺)、否定的な自己認識(恥、罪悪感、「自分は壊れた人間だ」という思い込み)、対人関係の問題(親密な関係の難しさ、信頼の問題、再被害のパターン)です。

一般的なPTSDとの違い

一般的なPTSDでは特定の出来事の記憶が問題の中心であるのに対し、複雑性PTSDは自己のアイデンティティや人間関係のパターン全体に影響を及ぼします。「自分が経験したことのせいでつらい」を超えて、「自分という人間そのものが問題なのだ」という深い恥の感覚が特徴的です。

回復への道筋

ハーマンの3段階回復モデル(安全の確保 → トラウマの処理 → 再びつながること)が治療の基本的な枠組みです。EMDR、センサリーモーター・サイコセラピー(Sensorimotor Psychotherapy)、スキーマ療法、内的家族システム(IFS)療法などが効果的です。

研究による裏づけ

ICD-11導入後の研究によると、複雑性PTSDの人の約36%に子ども時代の虐待経験があり、単純なPTSDより治療期間は長くなるものの、専門的な治療によって有意な改善が可能です(European Journal of Psychotraumatology, 2020)。安全な治療関係の中で取り組むことが鍵となります。

実践のヒント

  1. 自分の経験が「繰り返されたトラウマ」にあたるのかを認識することが第一歩です。
  2. 複雑性トラウマを専門とするセラピストを探し、カウンセリングを始めましょう。
  3. まずは安全な環境と安定した日常を整えましょう。
  4. セルフ・コンパッションの練習:「私のせいではなかった」と毎日自分に言い聞かせましょう。
  5. 信頼できる人との関係を、少しずつ築いていきましょう。

日常での取り入れ方

感情が高ぶったときは、「この感情は過去から来ているのか、それとも今から来ているのか?」を見分ける練習をしてみましょう。安心できる場所、活動、人のリストを作っておき、つらいときに活用してください。毎日、小さなセルフケア(お茶を飲む、散歩、お風呂)を欠かさずに行いましょう。

気をつけたいこと

  • 複雑性PTSDは自力で乗り越えるのがとても難しいものです。必ず専門家の助けを受けてください。
  • 治療の過程で一時的に症状が悪化することがあります。それも回復の一部です。
  • 加害者との接触を減らす、または断つことが、回復の前提条件になる場合が多くあります。

こころからのひとこと

繰り返された傷の中でも、あなたは今日まで生き抜いてきました。それ自体が、あなたの強さの証です。回復には時間がかかるけれど、あなたは回復していい人です。こころがその道のりを一緒に歩いていきますね。

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このコンテンツは専門的な医学的アドバイスに代わるものではありません。深刻な症状がある場合は、必ず精神保健の専門家にご相談ください。